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名探偵コナンの二次創作サイト。18歳未満の方は御遠慮ください。公式とは一切無関係です。 取り扱いカプ→快新・Kコ・その他コナン受 基本R18、管理人の趣味により猟奇、ヤンデレ、他者モブ×受けなフルボッコ話もあるかと思うので閲覧にはご注意ください。

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サイン

初めて快新かきました
ピクシブに乗せてたのから移動

サイン

コナン、と呼ぶ声に足を止める。
俺の名前だ。それは俺の名前だった。

 

 

もう二度と呼ばれることはない名前。
遠くから時折懐かしく思い出すだけの名前。


工藤新一が反応してしまったのは、短くはない二度目の小学生生活で染みついた日常の名残と、呼びかける口調が幼い子供に保護者が語りかける愛情そのものだったからだ。自分もかつてそんなふうに呼ばれていた。

 

だから聞こえた。
こんなうるさい休日の繁華街の雑踏で、その声だけがはっきりと聞こえた。
思わず振り返る。


「コナン」

 

と呼んだ人物は、こちらに背を向けしゃがみこんでいた。
ジーンズに、コートを羽織っている…男性だ。
そちらには建物の壁があるだけだ。電話でもしているのだろうか。
いずれにせよ、工藤の過去を知って呼びかけたわけではなさそうだった。


珍しい名前だが、きっと人違いだったのだろうと工藤が歩きだそうとした時だった。
今度は、もう少しはっきりと聞こえた。


「コナン」

色事にうとい工藤でもはっきりとわかる。男の呼び声は愛情らしい暖かな気配にに満ちていた。壁にむかってしゃがみこんでいるので相変わらず顔は見えないが、工藤はどうしてもその男のことが気になってしまった。気になると、顔が見たくなる。どんなヤツなのだろう。地べたにうづくまるようにしているから、もしかしたら気分が悪いのかもしれない、と工藤は自分で自分に言い訳を作って声をかけた。

 

「あの……」

――にゃあ

猫。猫の鳴き声に工藤の言葉は中断された。
男が首だけ捻って振り返り、工藤をみあげた。年は若い、工藤と同い年くらいだ。どこかで見たような気のする顔だちだったが、初めて見る顔とも言えた。

 

「俺の猫が」

と言ったきり、男は困ったように眉を寄せた。
肩を竦めて首をふる。


「猫?どうかしたんですか?」

工藤は礼儀正しく、慎重に問いかけた。


「猫を連れてたんだけど、逃げてそこの建物の隙間に入っちゃって」

「なるほど」

と、すぐに合点がいった。
猫の鳴き声は狭いビルとビルの間の路地から聞こえてきたし、男がしゃがみこんでいたのは猫を探していたためだったのだろう。にゃあ、とか細い鳴き声が聞こえた。

 

「ああ、これじゃあ大人は入れないな」


腕一本も通らないような隙間で、子猫は心細そうに泣いていた。
向こう側の大通りから差し込む光が一本の筋のように暗がりを照らす。
工藤もコートの袖をまくって腕をつっこみ、おいでおいでと手招きしてみたが、全く届かない。


「そう、それで困ってるんだ。人見知りでね、動物病院の帰りだったんだけど、ちょっと覗いた拍子にカゴからぱっと逃げ出しちゃって。おーい、コナン、出ておいで」


「……コナン?その猫の名前か」

思わず狼狽した語気を誤魔化すように、工藤は激しく猫に向かって手を振った。
本当は、その男の口から懐かしい名前を聞いたことに驚いたのだが、それを隠すために「妙な名前だ」とあわててつけたした。


「いい名前だろ。有名な探偵から取ったんだ」

「……探偵だって?推理作家のコナン=ドイルではなく?」


工藤は喉の渇きを誤魔化すように、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

「違うよ。俺の知っている名探偵からもらった名前だ」

男は立ち上がり、ジーンズについた砂埃を振り払った。
ずっとしゃがみこんでいたせいか、「いてて」と痺れる足をさする。
工藤はその時はっきりと男の顔を正面から見た。


「『もらった』、ねえ。ものは言いようだな」

「へえ、どういう意味かな」

「どーせ、奪ったんだろ?」

工藤はこみあげる笑いと、何故か腹の底から湧き上がる晴れ晴れとした昂揚を押し込めるのに必死だった。


「失礼な」

男は初対面の工藤の暴言にも気分を害した様子もなく、とても優雅に、紳士的に微笑んだ。


――にゃあ

と。小さな鳴き声。
猫は狭い建物のすきまから、するりとしっぽをSの字に揺らして這い出て来た。


「ああ、よかった。」

男は心から安堵したように溜息をついて、猫を抱き上げた。
暗がりではわからなかったが、真っ白の毛並みのよい猫だった。赤いリボンが首筋に捲かれている。猫は飼い主のことが好きなのか、大人しく抱かれている。工藤もつられて安堵する。


「猫、無事に戻ってきてよかったな。じゃあ俺はこれで」

「あ、待って」

男は、コナンと呼ばれた猫を抱きかかえたまま工藤を呼び止めた。


「君のおかげでコイツが戻ってきたようなもんだし、お礼にお茶でもごちそうさせてよ」

「いや、別に俺は何もしてないが」

「まーいいから。近くにペット可のカフェがあるんだけど、そこでいいかな」


男は工藤が返事をするよりも先に、「コナン」を抱いたまま歩きだした。
猫の尻尾が機嫌よく揺れているのを工藤は仕方なしに追う。


「しょーがねーな。つきあってやるよ。それにしても、その…コナン、だっけ?おまえに随分懐いているんだな」

「まあね。君も何かペット飼ってみれば?広い家に一人暮らしって寂しいだろ?」

「……ってなんで初めて会ったのに知っているんだよ、俺が『広い家に一人暮らし』だって」


大まじめに聞く工藤の問いかけに、男は一瞬目を大きく見開くと、くふふ、とひだまりで微睡む猫のあくびのように微笑んだ。

 





サイン



――――


気付いて、というサイン
名前のサイン
証拠=サイン





続きます
 

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